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東京地方裁判所 昭和31年(ワ)4169号 判決

原告 西武鉄道株式会社

被告 常磐炭鉱株式会社

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告は原告に対し、金二百三十九万四千七百四十円と、これに対する昭和三十一年六月十四日から完済に至るまで年六分の割合による金員を支払うべし。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、請求の原因として、かつ被告の主張に答えて、つぎのとおり述べた。

原告は地方鉄道法にもとづき貨客の運送をすることを業とする株式会社、被告は石炭の販売等を業とする株式会社である。

被告は、アメリカ合衆国(その駐留軍隊)との間に昭和二十九年六月十八日にした石炭販売契約にもとづく義務を履行するために、訴外日本通運株式会社(以下日通という)に石炭運送の取次を委任して、昭和二十九年九月六日から同年十月十二日までの間に、日本国有鉄道(以下国鉄という)の隅田川駅から、国鉄池袋駅または国分寺駅経由で、原告会社線北所沢駅まで、石炭を送つてもらつた。すなわち、被告から石炭運送の取次を委託された運送取扱人日通は、右の期間国鉄及び原告(国鉄と連絡運輸協定を結んでいた)と相次運送契約を締結し、原告は、国鉄が国鉄池袋駅または国分寺駅まで運送した石炭入り貨車を受けついで、昭和二十九年九月六日から同年十月十二日までの間計三七八車輛の石炭を、右池袋駅または国分寺駅から前記北所沢駅側線まで運送した。右運送契約における荷送人は日通であり、荷送人が定めた荷受人は被告であつた。被告は、送つた石炭につき北所沢駅で米軍の検査を受けなければならなかつたのであるから、運送状の記載の如何にかかわらず、被告が荷受人であつたとみなければならない。

しかるに、被告は、別紙明細書のとおり所定の時間に北所沢駅についた石炭積貨車の石炭の取りおろしを怠り、そのため、原告は、別紙明細書〈省略〉のとおり二四四車輛(屯数五〇一三屯)につき合計九七九三時間不必要に北所沢駅構内に、貨車を留めおかざるを得なかつた。

ところで、鉄道運送業者(地方鉄道法によるものを含む)によつて運送されて終着駅についた貨物を荷受人が取りおろさなかつたときは、鉄道運送業者は、つぎにあげる法令等の根拠により、留置時間に比例して、一定の貨車留置料(すなわち、鉄道業者が貨車を使用することができなかつたことによつて生じた損失の補償金)の支払いを荷受人に対して請求することができるのである。

鉄道営業法にもとづいて定められた鉄道運輸規程(昭和一七年鉄道省令第三号)六二条には、「貨主が鉄道の定むる積卸時間内に貨物の積卸を完了せざるときは、鉄道は其の後の時間に対し相当の貨車留置料を請求することを得」と定めてある。ここに貨主というのは荷受人である。つぎに、昭和二十四年九月日本国有鉄道公示第一二五号貨物運送規則二九条には「積卸貸主負担の貨物の積込又は取卸し時間は、(1) 貨車の場合、(イ)火薬類は二時間、(ロ)その他の貨物は五時間とし、右の時間内に積込又は取卸しを終らないときは、その後の時間に対し、貨車留置料を収受する。」旨、駐留軍貨物運送手続に関する昭和二十七年三月二十八日日本国有鉄道総裁達第一六七号の二一条には、「車扱貨物の積卸時間は、(1) 午前中積卸線に入線し積卸しの通知をしたものは当日中、(2) 午後同上のものは翌日午前中とし、右積卸時間内に積込又は取卸しを終らないときは、その後の時間に対し、貨車留置料を収受する。」旨、その四九条には、「貨物の料金率及びその計算方は、一般貨物の例による。」と、前記貨物運送規則六六条には、「第二章の規定により収受する貨物の料金等及びその計算方は、特に定めるものを除いて、別表の貨物料金表に定める。」と、別表の貨物料金表には、「貨車留置料、(1) 国鉄又は連絡運輸機関所属の貨車、一屯六時間までごとに金七十円」とある。これらは国鉄に関する法規規則であるが、原告も連絡運輸規則により右法規等に準拠して営業をしているのであるから、原告と被告との前示関係は右法規等によつて規律されるのである。仮りにそのような法理が成りたたないとしても、原告のような地方鉄道法による地方鉄道業者は国鉄がする貨物運送に関する法規規則に準拠して貨物運送営業をすべき商慣習法または商慣習がある。以上が地方鉄道法による鉄道運送業者が前記趣旨の留置料を請求することができる根拠である。

前記のとおり被告が貨車からの石炭の取りおろしを怠つたために原告に払うべき貨車留置料は、前記法規等にもとづいて計算すると、別紙明細書のとおり留置時間合計九七九三時間に対し合計金二百三十九万四千七百四十円となる。

よつて、被告に対し、右金二百三十九万四千七百四十円と、これに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和三十一年六月十四日から完済に至るまで商事法定利率年六分(商行為である右運送契約から生じたものであるから)の割合による遅延損害金との支払いを求める。

本件運送契約について作られた運送状である車扱貨物通知書の上では荷受人がすべてキヤンプ所沢となつていることは認める。

被告の時効の抗弁は理由がない。すなわち被告主張の商法の法条は本件の債権については適用がない。仮りにその適用があるとしても、被告は昭和三十一年一月十日本件債務を承認したから、被告の時効の抗弁は理由がない。

かように述べ、立証として、甲第一号証の一、二、第二ないし第六号証、第七号証の一ないし四、第八ないし第十一号証の各一、二を提出し、証人貫井歳夫、小島栄作、太田中全の各証言、鑑定人小坂文治の鑑定の結果を援用し、乙第一号証の一ないし二一一が真正にできたこと、乙第二号証が日本国有鉄道貨物運送規則(昭和二四年九月公示第一二五号)の正文であることを認めた。

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する旨の判決を求め、つぎのとおり答弁した。

原告が地方鉄道法にもとづき貨客の運送をすることを業とする株式会社であり、被告が石炭の販売等を業とする株式会社であること、被告がアメリカ合衆国(その駐留軍隊)との間に昭和二十九年六月十八日にした石炭販売契約にもとづく義務を履行するために日通に対して右石炭運送の取次を委任したこと、そこで日通がその名で国鉄と運送契約を締結して、原告主張の期間、国鉄隅田川駅から、国鉄池袋駅または国分寺駅経由で、原告会社線の北所沢駅まで石炭を送らせ、原告が、右の期間、国鉄が国鉄池袋駅または国分寺駅まで運送した石炭入り貨車を受けついで、計三七八車輛の石炭を右池袋駅または国分寺駅から前記北所沢駅側線まで運送したこと、右運送契約における荷送人が日通であつたこと、別紙明細書のとおり所定の時間に北所沢駅側線についた右石炭積貨車の石炭の取りおろしがされず、二四四車輛(屯数五〇一三屯)につき超過時間合計九七九三時間にわたり北所沢駅構内に貨車が留めおかれたこと、国鉄の運送に関して原告主張の法規規則があることは認める。

原告が国鉄と連絡運輸協定を結んでいたかどうか、原告がその主張の国鉄に関する法規規則に準拠して営業をしているかどうかは知らない。

原告ははじめその主張の運送契約における荷受人はアメリカ合衆国(その駐留軍隊)であることを認めたにかかわらず、昭和三十三年五月二十三日午後一時の口頭弁論期日に至り右の荷受人は被告であるとその主張を変更した。これは自白の取消しであるところ、被告はこれに異議がある。また、被告は右の荷受人が被告であることを否認する。右の荷受人はキヤンプ所沢(アメリカ合衆国)である。本件運送契約について作られた運送状である車扱貨物通知書の上ではそうなつている。

原告がその主張の貨車留置料の請求権者であること、原告主張の商慣習法、商慣習が存在することは否認する。

原告の請求原因事実に対して被告が争うおもな点は、被告は本件石炭の運送契約における荷受人(貨主)でなく、したがつて原告主張の貨車留置料の支払い義務者でないということである。この点については、国鉄貨物運送規則、同補則(原告のあげたものの外貨物運送規則の第八〇条)によると、運送した貨物の取りおろしをしなければならぬ者は貨主であり、貨主とは荷受人、荷送人又は貨物引換証の所持人をいうことになつている。本件石炭の荷受人等でなく、したがつて貨主でない被告は、原告主張の貨車留置料を支払う義務を負わないのである。

仮りに原告が被告に対して原告主張の貨車留置料請求権を取得したとしても、それは時効によつて消滅した。すなわち、原告主張の債権はおそくとも昭和二十九年十月十六日には発生した(原告の主張による)から、商法五八九条五六七条により、その後一年を経過するとともに消滅時効が完成した(本訴は昭和三十一年六月二日に至つて提起された)。

原告主張の日に被告が本件債務を承認したことは否認する。

かように述べ、立証として乙第一号証の一ないし二百十一、第二号証を提出し、証人安田健蔵、樋口賢之助の各証言を援用し、「甲第五、六号証が真正にできたかどうかは知らない。その他の甲号各証が真正にできたことは認める。」と述べた。

理由

原告が地方鉄道法による貨客の運送をすることを業とする株式会社であり、被告が石炭の販売等を業とする株式会社であること、被告がアメリカ合衆国(その駐留軍隊)との間に昭和二十九年六月十八日にした石炭販売契約にもとづく義務を履行するために日通に対して右石炭運送の取次を委任したこと、そこで日通がその名で国鉄と運送契約を締結して、原告主張の期間、国鉄隅田川駅から、国鉄池袋駅または国分寺駅経由で、原告会社線の北所沢駅まで石炭を送らせ、原告が右の期間、国鉄が池袋駅または国分寺駅まで運送した石炭入り貨車を受けついで、計三七八車輛の石炭を右池袋駅または国分寺駅から前記北所沢駅側線まで運送したこと、別紙明細書のとおり所定の時間に右北所沢駅側線についた右石炭積貨車の石炭の取りおろしがされず、二四四車輛(屯数五〇一三屯)につき超過時間合計九七九三時間にわたり北所沢駅構内に貨車が留めおかれたことは、当事者間に争いがない。

証人安田健蔵の証言と弁論の全趣旨とによると、原告は国鉄と連絡運輸協定を結んでおり、日通がした右石炭運送契約は国鉄と原告とのいわゆる相次運送契約であることが認められる。

よつて原告主張の貨車留置料請求権の根拠、その支払い義務者について検討を進める。

鉄道営業法の委任にもとづいて定められた鉄道運輸規程(昭和一七年鉄道省令第三号)第六十二条には、「貨主が鉄道の定むる積卸時間内に貨物の積卸を完了せざるときは、鉄道は其の後の時間に対し相当の貨車留置科を請求することを得」と定めてある。

そして、真正なものであることに争いのない乙第二号証によると、日本国有鉄道貨物運送規則(昭和二四年九月公示第一二五号)には、

第二七条(積卸作業の負担)

車扱貨物並びに前条により積載する小口扱貨物及びトン扱貨物の発駅又は着駅における貨車又は自動車への積込又は取卸し(覆布、網、綱等の掛けはずしを含む。)、貨車又は自動車に設備されていない貨物運搬用建木、積付用品その他の準備(取付、取りはずし等の作業を含む。)並びに貨物積卸しのため積卸線に回入した貨車の移動は、貨主が行うものとする。

前項以外の積卸し又は積換は、国鉄が行う。但し、自動車線にまたがり運送する車扱貨物の接続駅における積換に対しては、接続料を収受する。

第二九条(積卸時間)

積卸貸主負担の貨物の積込又は取卸し(覆布、網、綱等の掛けはずし、貨車の清掃その他の附帯作業を含む。)時間は、特に定めるものの外、積込又は取卸しの通知を出した時(到着通知不要の免責特約をしたものは、引渡しの準備を終つた時とする。)、又は通知に代る掲示をした時から起算し、次の通りとする。但し、貨物の発着が多くて、国鉄が運輸上の支障を生ずる虞があると認めたときは、これを短縮することがある。

(1)  貨車の場合

イ  火薬類(略) 2時間

ロ  その他の貨物 5時間

(2)  略

前項の時間内に積込又は取却しを終らないときは、その後の時間に対し、貨車留置料………を収受する。

三-五項略

第八〇条(貨車留置料、自動車留置料の収受)

貨車留置料及び自動車留置料は、第二九条第二項の場合は、積込又は取卸しを終つた際、荷送人、荷受人又は貨物引換証若しくは船荷証券の所持人から、第四七条及び第四九条の場合は、指図に応じた際又は取卸しを終つた際、指図した者から収受する。但し、発駅返送、荷受人又は着駅変更の場合であつて、原着駅における貨車留置料の支払を原荷受人が承諾したときは、原荷受人から収受することがある。

と定めてあることが認められる。

また、鑑定人小坂文治の鑑定の結果と弁論の全趣旨とによると、連絡運輸規則(昭和二五年五月日本国有鉄道公示第一〇九号)には、国鉄と地方鉄道法にもとづいて貨客を運送することを業とする鉄道運送業者(いわゆる私鉄)とが連絡運輸をする場合につき、前記貨物運送規則第二七条と同趣旨の規定、同規則の第二九条、第八〇条を準用する旨の規定があることが認められる。

この貨物運送規則及び連絡運輸規則は、鑑定人小坂文治の鑑定の結果によると、国鉄運輸により、又は国鉄、私鉄の連絡運輸によりたくさんの貨物を公共の目的にそうように能率的に公平に運送しようという見地から作られた運送約款であり、いわゆる普通契約条款に属するものであることが認められる。ところで、国鉄運輸により、又は国鉄、私鉄の連絡運輸により、貨物の運送を委託する者は国鉄の定めた貨物運送規則、連絡運輸規則によつて運送契約の内容を定める商慣習があることは顕著なことであるから、右貨物運送規則、連絡運輸規則は、貨物の運送を委託する者がその内容を知ると否とにかかわらず、その運送契約の内容に取り入れられるものといわなければならない。

さて、前記鉄道運輸規程及び貨物運送規則、連絡運輸規則の諸規定と鑑定人小坂文治の鑑定の結果とによると、所定の時間内に貨車から貨物の取りおろしをしないことによる貨車留置料の支払い義務者は貨主であり、ここに貨主とは、荷送人、荷受人または貨物引換証の所持人を指すことが明らかである。貨車留置料支払い義務は運送契約から生ずるものであるから、運送契約の当事者である荷送人、運送契約で荷受人と定められた者、または貨物引換証が発行された場合におけるその所持人だけが貨車留置料の支払い義務者になることはごく自然のことであり、例えば貨物の所有者は所有者として当然この場合の貨主になるものではないといわなければならない。

原告も、本件運送契約において被告が荷受人と定められ、したがつて被告が貨車留置料の支払い義務を負う貨主になつたと主張し、これを前提として本訴を進めている。

この点について、原告は、はじめ本件運送契約における荷受人はアメリカ合衆国(その駐留軍隊)であると主張したが、のちにこれを変えて荷受人は被告であると主張するに至つたこと、まさに被告のいうとおりである。しかし、アメリカ合衆国(その駐留軍隊)が荷受人であるという事実は本来被告が挙証責任を負う事実ではない。そのような原告の陳述は、むしろ、原告が挙証責任を負う事実を否定する陳述である。これは原告の自白にはならず、したがつて原告がこれを撤回するには何らの拘束を受けない、と当裁判所は考える。この点に関する被告の主張は採用することができない。

本件運送契約における荷送人が日通であることについては争いがないから、右の荷受人が誰であるかについて判断する。

本件運送契約について作られた運送状である車扱貨物通知書の上では荷受人はすべてキヤンプ所沢となつていることは、当事者間に争いがない。運送契約は要式契約ではないから右車扱貨物通知書は単に証拠書類に過ぎないといわなければならない。しかし、鉄道運送業者を相手とする運送契約で、車扱貨物通知書に書かれている以外の者を荷受人と認めなければならないというようなことは、ごく特殊な場合に限るとしなければならない。

この点で問題になる一、二の事項について検討する。

甲第十一号証の一、二(真正にできたことに争いがない)証人貫井歳夫、樋口賢之助、小島栄作の各証言とを合せ考えると、被告は、アメリカ合衆国(その駐留軍隊)との契約により、本件石炭の受領地点(北所沢駅側線)で駐留軍隊の炭質検査を受け、不合格炭は返還を受けることと定めたのみならず、駐留軍隊が運送人から引渡しを受けた石炭の現実の取りおろし及び構内運搬に必要な役務を提供し、石炭の運送及び右役務に要する費用を負担することを約したこと、また被告は駐留軍隊の諒解のもとに西武通運株式会社をして、右受領地点で駐留軍隊の指図に従う右石炭取りおろし構内運搬等の役務を提供させたことが認められるが、これは本件運送契約に先行する被告とアメリカ合衆国(その駐留軍隊)との間の売買契約上の取りきめと、被告がこの契約上の義務を履行するためにとつた処置である。右のようなことがあつたからといつて、右売買契約とは別個な本件運送契約について、車扱貨物通知書の記載を無視して被告を荷受人と認めなければならないものではない(被告とアメリカ合衆国駐留軍隊との間の契約内容、その履行状態の如何によつては、駐留軍隊が荷受人として原告に払つた貨車留置料について被告が求償に応じなければならないというような場合も生ずるであろうが)。

また、証人貫井歳夫、小島栄作、太田中全の各証言によると、北所沢駅側線(駐留軍専用線)に貨物を運送するには運送契約における荷受人を駐留軍隊とするほかなかつたことが認められるが、そうであるからといつて本件運送契約における荷受人はキヤンプ所沢ではなく被告であつたとすることはできない。

以上のとおりであるから本件運送契約における荷受人はアメリカ合衆国(駐留軍隊)と認めるほかない。

本件石炭について貨物引換証が発行されたというようなことについては、主張も証拠もない。

してみると、被告は貨車留置料の支払い義務者ではないといわなければならない。

原告の請求は、以上の理由から失当であるが、つぎの理由によつても採用することができない。

被告に対する原告の貨車留置料請求権なるものは、原告の主張によると、おそくも昭和二十九年十月十六日には発生したのである。原告はこの時には権利を行使することができたはずである。しかるに、原告が本訴を提起したのは昭和三十一年六月二日である。その間一年七カ月以上を経過している。原告のいう貨車留置料請求権の消滅時効期間は一年である(商法五八九条五六七条)。したがつて、右債権については本訴提起前に時効が完成していたのである。

原告は、「被告は昭和三十一年一月十日に本件債務を承認した。」という。これは被告が時効の利益を放棄したという主張であるとみるのが相当であろう。

しかし、甲第一号証の一によつても被告の債務承認の事実を認めることができない。ほかにその事実を認めることができる証拠はない。

してみると、被告に対する原告主張の貨車留置料請求権は、仮りにそれが発生したとしても、時効によつて消滅したものといわなければならない。

以上説明のとおり、原告の請求は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 新村義広)

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